青函連絡船が姿を消してもう何年になるだろうか。その中の一隻がつい先日まで長崎港に係留されていた。青函連絡船「大雪丸(二代目)」は昭和40年に就航。札幌五輪の聖火輸送船としても活躍したが、昭和63年終航。その後、長崎港で国内唯一の海上ホテル「ヴィクトリア」に名を変え、人気を博した。また結婚式場としても利用され、新婚夫婦には汽笛と信号旗で「安全なる航海を祈る」のメッセージを送り続けるなど市民にたいそう親しまれてきた。しかし、不況のなか、平成17末に閉業となった。
往診の行き帰りに眺める大雪丸は造船所の並ぶ海岸の一角に往時を思うかのようにひっそりとしていた。このたび、中国に売却され、再び船のホテルとして活用される予定というニュースを耳にして嬉しく思った。福建省への曳航を前に、長崎帆船祭の打ち上げ花火を目の当たりにしながら、大雪丸は何を感じただろうか。満足にお金もなかった学生時代、北海道の旅でお世話になった青函連絡船での熱いもてなしが思わず彷彿した。
藍生 2008年 19巻7号 P37