長崎の青函連絡船 ………以前のエッセーから

青函連絡船が姿を消してもう何年になるだろうか。その中の一隻がつい先日まで長崎港に係留されていた。青函連絡船「大雪丸(二代目)」は昭和40年に就航。札幌五輪の聖火輸送船としても活躍したが、昭和63年終航。その後、長崎港で国内唯一の海上ホテル「ヴィクトリア」に名を変え、人気を博した。また結婚式場としても利用され、新婚夫婦には汽笛と信号旗で「安全なる航海を祈る」のメッセージを送り続けるなど市民にたいそう親しまれてきた。しかし、不況のなか、平成17末に閉業となった。

往診の行き帰りに眺める大雪丸は造船所の並ぶ海岸の一角に往時を思うかのようにひっそりとしていた。このたび、中国に売却され、再び船のホテルとして活用される予定というニュースを耳にして嬉しく思った。福建省への曳航を前に、長崎帆船祭の打ち上げ花火を目の当たりにしながら、大雪丸は何を感じただろうか。満足にお金もなかった学生時代、北海道の旅でお世話になった青函連絡船での熱いもてなしが思わず彷彿した。

                       藍生 2008年 19巻7号 P37

新型コロナウイルス感染症第11波と発熱外来

大方の予測のように新型コロナウイルス感染症は7月に入り、感染拡大していますが、当院にもこれまで経験しなかった数の患者さんが来院されています。

しかし、当院は入口が一か所で、しかもビルの二階にあるため、発熱のある患者さんと一般の患者さんとを同時に診ることができません。

新型コロナウイルスの症状かもしれない発熱、咳、下痢・腹痛などの症状がある患者さんは、一般の患者さんとの動線を区別するため、通常の診療の合間の時間を利用するか、診療終了時の昼か夕方などにみるようにしています。

電話連絡もなく、直接、おいでになっても対応することができません。

発熱、咳嗽(せき)、咽頭痛、腹痛、下痢などの患者さんで、当院での診察を希望される方は、必ず、電話をかけてください。当院受付より、改めて来院の時刻を指示しますので、それに従ってください。

発熱外来は時間を決めて行っていますので、患者さんのご希望の時間の検査、診察のご要望には対応できかねますので、ご了承ください。

桃カステラ ……… 以前のエッセーから

 娘が嫁いでしまい、雛飾りも我が家には見られなくなってしまったが、店頭に飾られる桃カステラには春の到来を感じさせられる。

 開業して最初の患者さんであったAさんは、毎年この季節になると、診療所の私どもに桃カステラを届けてくださるのが恒例となっていた。

 桃カステラは、ポルトガル伝来のスポンジの上に、中国では不老長寿の縁起ものである桃を糖衣でかたどったカステラで、長崎では桃の節句の定番となっている。

 Aさんは昔、造船所の爆発事故で大火傷をされたが、九死に一生を得られた。しかし、大量輸血により慢性肝炎をおこされ、その後、様々な治療を受けてこられたが、昨年、とうとうお亡くなりになってしまった。無類の芝居好きで、退職後は旅役者となり各地を公演されて回ったそうだが、病気となってはそれもかなわなくなった。

 今年、桃カステラを口にしたとき、Aさんが遥か旅の空の下、今でも見えを切られている姿を見たような気がした。

                      (藍生 19巻6号 p43 2008)